介護タクシーと福祉タクシー。似たようなサービス名称ですが、実は目的や利用条件、料金体系など、多くの違いがあります。
このページでは、それぞれの特徴や違いを5つのポイントから徹底解説。あなたに合ったサービスを選ぶための情報をご紹介します。
医療依存度の高い方の移送に特化した当社の経験から、安全で適切な移動手段の選び方をお伝えしていきます。
介護タクシーと福祉タクシーの違い一覧表
介護タクシーと福祉タクシー、名称は似ていますが、サービス内容や料金体系には大きな違いがあります。以下の表で主な違いを確認しましょう。
比較項目 | 介護タクシー | 福祉タクシー |
---|---|---|
目的 | 要介護者の通院など、日常生活に必要な外出の介助 | 公共交通機関の利用が困難な方の移動手段の提供 |
対象者 | 要介護1~5の認定を受けた方 | 身体の不自由な方、高齢者など |
介護保険 | 介助料のみ適用(条件あり) | 適用なし |
運転手の資格 | 介護職員初任者研修修了などの資格が必要 | 二種免許のみ(介護資格不要) |
家族の同乗 | 原則として不可 | 可能 |
このように、介護タクシーと福祉タクシーは目的や対象者、サービス内容が大きく異なります。それぞれの詳しい違いについて、以降で詳しく解説していきます。
介護タクシーと福祉タクシーの違い①|目的の違い
まず、介護タクシーと福祉タクシーの根本的な違いである「目的」について解説します。
介護タクシーの目的
介護タクシーは、要介護者の日常生活や社会生活で必要不可欠な外出をサポートすることを目的としています。「介護タクシー」という名称は一般的な呼び方で、正式には「通院等のための乗車または降車の介助」というサービス名で、訪問介護サービスの一つとして位置づけられています。
専門の資格を持った介護士が乗務し、乗車から降車まで一貫した介助を提供します。ただし、利用目的は以下のような日常生活に必要な外出に限定されます。
- 通院や通所リハビリ
- 介護保険施設の見学
- 預貯金の引き出し
- 公共機関での手続き
福祉タクシーの目的
福祉タクシーは、公共交通機関での移動が困難な方に対して、より快適な移動手段を提供することを目的としています。国土交通省の管轄下にある一般のタクシー事業者が社会福祉の観点から提供するサービスです。
福祉タクシーには利用目的の制限がなく、以下のような幅広い用途で利用できます。
- 通院や通所
- 買い物や食事
- 旅行やレジャー
- 冠婚葬祭
- その他の外出全般
介護タクシーと福祉タクシーの違い②|対象者の違い
続いて、介護タクシーと福祉タクシーでは、利用できる対象者が異なります。
介護タクシーの対象者
介護タクシーを介護保険で利用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 要介護1~5の認定を受けている
- 一人で公共交通機関の利用が困難
- 家族など付き添う人がいない
- ケアプランに介護タクシーの利用が記載されている
なお、要支援1・2の方は介護保険でのサービス利用はできませんが、全額自己負担で利用することは可能です。
福祉タクシーの対象者
福祉タクシーは、以下のような方々が利用できます。介護認定の有無は問われません。
- 高齢者
- 障害者手帳をお持ちの方
- けがや病気で一時的に歩行が困難な方
- その他、公共交通機関の利用が困難な方
福祉タクシーは、利用対象者の制限が緩やかで、幅広い方が利用できるのが特徴です。ただし、乗降時の介助が必要な場合は、ご家族など付き添いの方のサポートが必要となる場合があります。
介護タクシーと福祉タクシーの違い③|料金の違い
料金体系は、介護タクシーと福祉タクシーで大きく異なります。また、事業者によっても料金設定は様々です。まずは基本的な違いを把握しましょう。
介護タクシーの料金
介護タクシーの費用は、以下の3つの要素で構成されています。このうち、介護保険が適用されるのは介助サービスの費用のみです。
- 送迎にかかる運賃(全額自己負担)
- 介助サービスの費用(介護保険適用可能)
- 介護機器のレンタル料(全額自己負担)
運賃
当社の場合、初乗り2kmまで900円、以後240mごとに100円加算される距離制運賃を採用しています。また、時間制運賃(1時間5,590円、以後30分2,590円)での利用も可能です。このほか、予約料400円、迎車料900円が必要です。なお、深夜(22:00~翌5:00)は20%割増となります。
介護サービス費用
介護保険適用時の「通院等乗降介助」は、自己負担1割の場合、1回約100円となります。往復の場合は2回分として計算されます。介護保険が適用されない場合は、基本介助料1,100円~、特殊介助料(階段介助など)1,100円~などが必要です。
【具体的な料金例】
例えば、車いすを利用して5kmの移動を行う場合を考えてみましょう。
- 運賃:3,000円(全額自己負担)
- 介助料:100円×2回=200円(介護保険適用)
- 車いす使用料:1,100円(全額自己負担)
運賃は3,000円、車いす使用料は1,100円で、これらは全額自己負担となります。介護保険が適用される介助料は1回100円で、往復2回分の200円のみが介護保険による1割負担となります。結果として、合計の自己負担額は4,300円となります。
介護器具・医療機器の料金
基本的な介護器具 |
・車いす:基本介助料1,100円 ・リクライニング車いす:4,200円(介助料込) ・ストレッチャー:6,200円(介助料込) |
---|---|
医療機器(当社の場合) |
・医療用酸素:2,000円/200L ・人工呼吸器:24,000円 ・吸引器:3,000円 ・生体情報モニタ:6,000円 |
基本的な介護器具の料金は介護タクシー各社で大きな違いはありませんが、医療機器の取り扱いができる事業者は限られています。
当社では、医療依存度の高い方の搬送に対応するため、人工呼吸器や生体情報モニタなどの専門的な医療機器を完備しています。
福祉タクシーの料金
福祉タクシーは介護保険の適用はありませんが、障害者手帳の提示で運賃が10%割引になったり、自治体による助成制度を利用できる場合があります。
運賃
一般のタクシーを基準とした料金体系を採用しており、初乗り(1.096kmまで)500円、その後は255mごとに100円が加算されます。また、走行速度が時速10km以下の場合は1分35秒ごとに100円が加算される時間距離併用制が適用されます。
深夜(22時~5時)は2割増、迎車料金は1回300円が一般的です。ただし、特殊車両を使用する場合は追加料金が発生する場合があります。
レンタル費用
車いすやストレッチャーなどの器材レンタル料金は、介護タクシーと同程度の料金設定が一般的です。医療機器が必要な場合は別途料金が発生します。
貸し切り代や予約費用
予約料(400円程度)や待機料金が必要です。なお、自治体によっては福祉タクシー券による助成があります。例えば東京都中央区では、申請時期により年間10,000円~40,000円分の利用券が給付されます。
このように、介護タクシーは介護保険が適用される代わりに利用条件が限定的である一方、福祉タクシーは全額自己負担ですが、各種割引や助成制度を活用できる可能性があります。ご自身の状況に応じて、適切なサービスを選択することが重要です。
介護タクシーと福祉タクシーの違い④|車両の違い
介護タクシーと福祉タクシーは、どちらも専用の車両設備を備えていますが、その特徴や装備には違いがあります。
介護タクシーの車両
介護タクシーの車両は、介護を必要とする方の安全で快適な移動を実現するために、様々な設備が整っています。
- 電動リフトやスロープ
- 車いす固定装置
- 手すり
- 補助シート
- 医療機器搭載スペース
当社の場合、医療依存度の高い方の搬送にも対応できるよう、人工呼吸器や生体情報モニタなどの医療機器を搭載可能な特殊車両を完備しています。また、ストレッチャーや寝台でも乗車可能な大型車両も用意しており、お客様の状態に応じて最適な車両をご用意いたします。
福祉タクシーの車両
福祉タクシーも車いすやストレッチャーでの乗車に対応した設備を備えていますが、基本的には移動手段の提供が主な目的となります。
- スロープまたはリフト
- 車いす固定装置
- 回転シート
- 乗降用ステップ
ただし、福祉タクシーのドライバーは介護資格を持っていない場合が多く、法律上、乗り降りの介助を行うことはできません。そのため、介助が必要な場合は、ご家族やヘルパーの方の付き添いが必要になることがあります。
なお弊社の場合、福祉タクシーとしてのご利用であっても介護資格を持ったスタッフが対応いたします。介護タクシーと同じ車両でお伺いいたしますので、ぜひ日常のご移動の際もご依頼ください。
介護タクシーと福祉タクシーの違い⑤|家族の同乗
自力での移動が困難な方の通院や外出時、家族が同乗できるかどうかは大きな関心事です。介護タクシーと福祉タクシーでは、家族の同乗に関する規定が異なります。
介護タクシーは原則として家族同乗不可
介護タクシーは介護保険サービスの一環として提供されるため、原則として家族の同乗はできません。これは、介護保険が「家族など周囲の介護者がいない状況での利用」を前提としているためです。
介護タクシーに家族が同乗できるケース
ただし、以下のような場合は、ケアマネージャーと相談の上で家族の同乗が認められることがあります。
- 医療的ケアが必要で、家族の付き添いが必要と判断される場合
- 認知症の方で、家族の付き添いが必要と判断される場合
- 病状などにより、主治医から家族の付き添いを求められている場合
当社では、医療機器を使用される方の移送も行っているため、ご家族同乗のもとご利用されるケースも多いです。ぜひお気軽にご相談ください。
福祉タクシーは家族同乗可能
福祉タクシーは、家族やヘルパーなど付き添いの方と一緒に乗車することができます。
これは福祉タクシーのドライバーは介護資格を持っていない場合が多く、乗降時の介助が必要な場合は家族のサポートが必要となるためです。
また、そもそも冠婚葬祭やレジャーなど、家族での外出を想定したサービス設計となっていることも理由です。
介護タクシーのメリット・デメリット
介護タクシーならではの特徴を、メリット・デメリットの両面から解説します。サービス選択の参考にしてください。
介護タクシーのメリット
- 有資格者による専門的な介助が受けられる
- 乗車から降車まで一貫した介助サービスを提供
- 介護保険が適用され、介助料の負担を抑えられる
- 車両に医療機器を搭載できるため、医療依存度の高い方も安心
- ケアマネージャーと連携した計画的な利用が可能
特に介護資格を持ったドライバーによる介助は、利用者とご家族の大きな安心につながります。当社では医療機器の取り扱いにも精通したスタッフが対応しており、医療依存度の高い方の移動もサポートいたします。
介護タクシーのデメリット
- 要介護認定(要介護1以上)が必要
- ケアプランへの記載が必要
- 利用目的が日常生活上の必要な外出に限定される
- 原則として家族の同乗ができない
- 事前予約が必要で、急な利用は難しい
介護保険が適用される反面、利用には一定の条件があり、手続きも必要です。また、レジャーや旅行などでの利用は介護保険の対象外となるため、全額自己負担となります。
福祉タクシーのメリット・デメリット
福祉タクシーは、介護保険適用外のサービスですが、その分、利用に制限が少ないのが特徴です。メリット・デメリットを確認しましょう。
福祉タクシーのメリット
- 要介護認定の有無に関係なく利用できる
- レジャーや旅行など、利用目的の制限がない
- 家族やヘルパーの同乗が可能
- 自治体の助成制度を利用できる場合がある
- 障害者手帳による割引が適用できる
特に利用目的に制限がないため、通院に限らず、冠婚葬祭やレジャーなど、様々な外出に活用できます。また、自治体による福祉タクシー券の給付を受けられる場合は、費用負担を抑えることができます。
福祉タクシーのデメリット
- 料金が全額自己負担
- ドライバーによる介助が制限される
- 医療機器の対応ができない事業者が多い
- 乗降時に家族の介助が必要な場合がある
- 事前予約が必要で、すぐの利用は難しい
特にドライバーが介護資格を持っていない場合は、乗降時の介助に制限があります。介助が必要な方は、家族やヘルパーの付き添いを検討する必要があるでしょう。
まとめ|介護タクシーと福祉タクシーの違いを理解して選び方を知ろう
ここまで介護タクシーと福祉タクシーの違いについて、5つのポイントから詳しく解説してきました。それぞれの特徴を整理しましょう。
- 目的の違い:介護タクシーは必要不可欠な外出に、福祉タクシーは幅広い用途に対応
- 対象者の違い:介護タクシーは要介護1以上が条件、福祉タクシーは条件なし
- 料金の違い:介護タクシーは介助料が介護保険適用、福祉タクシーは全額自己負担だが各種割引あり
- 車両の違い:両者とも専用設備を完備、介護タクシーは医療機器対応も
- 家族同乗:介護タクシーは原則不可、福祉タクシーは可能
なお、介護タクシーを利用する場合は、事前にケアマネージャーに相談し、ケアプランへの記載が必要です。福祉タクシーは各自治体の福祉窓口で助成制度の確認をすることをおすすめします。より詳しい情報や具体的な料金については、各事業者にお問い合わせください。
当社では、介護タクシー・福祉タクシーともに、医療機器を使用される方の搬送にも対応しています。医療依存度の高い方の移動に関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。