家庭用血圧計は健康管理の強い味方ですが、永久に使えるものではありません。適切な時期に買い替えなければ、誤った測定値により健康管理に悪影響を及ぼす恐れもあります。
本記事では、血圧計の寿命や古くなると現れる症状、買い替え時期の目安などを詳しく解説します。また、おすすめの血圧計や長持ちさせるための管理方法もご紹介します。
1.血圧計の寿命はどれくらい?古くなるとどうなる?
毎日の健康管理に欠かせない血圧計ですが、適切な時期に買い替えないと、正確な血圧測定ができなくなる可能性があります。
では、血圧計の寿命はどれくらいなのでしょうか?また、古くなるとどのような症状が現れるのでしょうか?
家庭用血圧計の標準的な寿命
家庭用血圧計の標準的な寿命は、一般的に「使用回数」または「使用年数」で表されます。多くのメーカーでは、使用回数が約3万回、または使用年数が約5年を耐用年数の目安としています。中には使用回数1万回で寿命とされる血圧計もあります。
具体的な耐用年数は製品によって異なりますので、お手持ちの血圧計の取扱説明書を確認しましょう。説明書を紛失してしまった場合は、メーカーのウェブサイトで確認するか、カスタマーサポートに問い合わせることをお勧めします。
国税庁が定める減価償却資産としての血圧計の法定耐用年数も5年と定められており、これは医療機器メーカーの設定する耐用年数と同じです。つまり、税法上も血圧計は5年程度で買い替えるものとして位置づけられているのです。
血圧計の経年劣化による症状と影響
血圧計が古くなると現れる主な症状としては、次のようなものがあります。
- 測定値が大きく変動する
- 以前より高めの数値が出るようになった
- エラー表示が頻繁に出る
- カフの膨らみが弱くなった
- 空気の漏れが生じる
- ボタンの反応が悪い
- 表示画面が見にくくなった
- 電池の消耗が早くなった
最も多いのは測定値の不安定さです。同じ条件で短時間のうちに何度か測定しても、数値が大きく異なるようになります。これは、内部の圧力センサーや電子回路の劣化が原因です。
また、カフ(腕帯)を膨らませる際のポンプの動作が弱くなったり、空気漏れが生じて正常に加圧できなくなったりすることもあります。この状態では「エラー」表示が頻繁に出るようになり、何度も測り直しが必要になります。
2.血圧計の部位ごとの寿命
血圧計は、本体・カフ(腕帯)・ゴムチューブなど複数の部品から構成されています。
それぞれの部位には異なる寿命があり、一部の部品だけが劣化することも多いです。血圧計を長く正確に使用するために、各部位の寿命と劣化のサインも知っておきましょう。
血圧計本体の寿命と劣化症状
血圧計本体には、圧力センサー、電子回路、測定アルゴリズムを計算するマイクロプロセッサーなどの精密部品が内蔵されています。これらの部品は経年劣化により、徐々に精度が低下していきます。一般的に、血圧計本体の寿命は約5年、または3万回程度の使用が目安とされています。
本体の劣化症状としては、まず表示される数値の安定性が失われることが挙げられます。同じ条件で続けて測定しても、血圧値が大きく変動するようになります。
また、測定完了までの時間が長くなったり、加圧・減圧の速度が変化したりする症状も見られます。
これらの症状が見られる場合は、本体の劣化が進んでいる可能性が高く、血圧計全体の買い替えを検討する時期と言えるでしょう。
カフ(腕帯)の寿命と交換時期
カフ(腕帯)は、血圧計の中でも最も頻繁に接触や摩擦を受ける部分です。毎日使用する場合、カフの寿命は約3〜4年と言われています。
カフの劣化は、見た目の変化からも判断できます。表面の布地がすり切れたり、縫い目がほつれたりしてくるのが劣化のサインです。また、マジックテープ(面ファスナー)の粘着力が弱まり、腕にしっかり固定できなくなることもあります。
機能面としては、カフ内部のゴム袋(ブラダー)の劣化により、適切に膨らまなくなったり、空気漏れが生じたりします。こうなると正確な加圧ができず、測定誤差が大きくなります。
多くのメーカーでは、カフのみの交換部品を販売しています。本体が正常に機能している場合は、カフだけを交換することでコスト面も抑えます。ただし、本体の寿命も近い場合は、血圧計全体の買い替えを検討した方が良いでしょう。
ゴムチューブの寿命と劣化サイン
ゴムチューブは、血圧計本体とカフをつなぐ部品です。特に従来型の上腕式血圧計では、このゴムチューブを通じて空気の送り込みと排出が行われます。ゴムは経年変化による劣化が避けられない素材で、毎日使用する場合の寿命は約3〜4年と言われています。
具体的な劣化の症状としては、表面にひび割れや変色が生じたり、柔軟性が失われて硬くなったりします。また、曲げた部分に亀裂が入ることもあります。
最も問題なのはゴムの劣化による空気漏れです。微細な亀裂から少しずつ空気が漏れると、測定中にカフの圧力が徐々に低下し、正確な血圧値が得られなくなります。こうなると、「エラー」表示が頻繁に出るようになったり、測定値が不安定になったりします。
ゴムチューブも交換部品が販売されています。ただし、チューブだけの劣化はあまり一般的ではなく、同時期にカフも劣化していることが多いため、セットでの交換や血圧計全体の買い替えを検討するケースが多いです。
3.古い血圧計は数値が高く出る?
「最近血圧計の数値が高めに出るようになった」「新しい血圧計と古い血圧計で測ると値が違う」といった経験はありませんか?
ここでは、古い血圧計の測定誤差の実態と原因、正確に測定するためのポイントについて解説します。
経年劣化による測定誤差の実態
古くなった血圧計は、実際の血圧よりも高い値を示すことが多いことがわかっています。
ある医療機関での調査では、患者が持参した家庭用血圧計と医療機関の標準的な血圧計で測定値を比較したところ、約9割の家庭用血圧計で10mmHg以上の高値が出ることがわかりました。さらに、そのうちの2~3割の血圧計では20mmHg以上も高く、稀に30mmHgもの差が出るケースも報告されています。
血圧計の経年劣化による測定誤差はランダムに生じるわけではなく、ほとんどの場合「高め」に出る傾向があります。
古い血圧計が高めの数値を示す理由
古い血圧計は高めの数値を示す理由はいくつかあります。
- カフやゴムチューブの弾力性低下
- 圧力センサーの校正ずれと精度低下
- 測定アルゴリズムの精度低下
- 電子回路全体の劣化
- 空気漏れによる不適切な圧力維持
最も多いのは、経年劣化によるカフやゴムチューブの弾力性の低下によるものです。カフ内のゴム袋やチューブは、時間とともに硬くなり、適切に膨らみにくくなります。このため、同じ圧力を加えるためにより高い圧力が必要となり、結果として高い数値が表示されます。
また、電子式血圧計の圧力センサーの精度低下も原因の一つです。センサーは経年変化によって徐々に校正がずれていき、特に高めの値を示す傾向があります。使用年数が長くなるほど顕著になります。
これらの要因が組み合わさることで、古い血圧計は新しいものに比べて高い数値を示す傾向があるのです。
4.血圧計の買い替え時期
不正確な血圧値は健康判断を誤らせる原因となるため、定期的な買い替えが必要です。血圧計の買い替える3つの目安をご紹介します。
- 耐用年数が基準まで達した場合
- 測定値にばらつきが生じた場合
- 正常に計測できない症状が出た場合
耐用年数が基準まで達した場合
買い換えを検討する最も明確な指標は、耐用年数です。一般的に家庭用血圧計の耐用年数は約5年、または使用回数3万回程度とされています。これは単なる目安ではなく、メーカーが性能を保証できる期間として設定しているものです。
年に1回程度しか使わないような場合を除き、基本的には5年経過したものは買い替えを検討する時期と考えてよいでしょう。
測定値にばらつきが生じた場合
耐用年数に達していなくても、測定値に大きなばらつきが生じるようになったら買い替えのサインです。正常な血圧計では、連続測定時の誤差は概ね5mmHg程度に収まるはずです。
測定値のばらつきは、血圧計内部の圧力センサーや測定アルゴリズムの劣化が主な原因です。特に、同じ条件で測っても毎回異なる値が出る、時には通常よりかなり高い値や低い値が表示されるといった症状が見られる場合は要注意です。
1〜2分間隔を空けて、同じ条件で3回続けて測定してみましょう。3回の測定値の差が10mmHg以上ある場合は、血圧計の精度に問題がある可能性が高いです。
正常に計測できない症状が出た場合
血圧計が物理的・機能的に故障している場合も、もちろん買い替えのタイミングです。以下のような症状がないか確認してみてください。
- エラー表示が頻繁に出る
- カフが正常に膨らまない、または急速に空気が抜ける
- 表示画面が点灯しない、または一部が欠ける
- 測定中に異音がする
- 電池交換をしても電源が入らない
- ボタンの反応が悪い、または全く反応しない
- 常に同じ数値を示す(実際の血圧に関わらず)
- 測定が途中で中断される
これらの症状は、血圧計内部の電子回路やポンプ、バルブなどの機械部品の故障によることが多いです。
部品の交換修理が可能な場合もありますが、家庭用血圧計は修理費用が新品購入に近くなることが多く、基本的には買い替えを検討したほうがよいでしょう。
特に注意すべきなのは、「なんとなく測れている」と思って使い続けているケースです。エラーが出ても何度か測り直せば数値が表示される、カフの空気漏れがあっても強く巻けば測定できる、といった状況でも、その測定値の信頼性は非常に低いと考えるべきです。正しく健康管理をするためには、適切に機能する血圧計が必須です。
5.血圧計を長持ちさせるための正しい管理方法
最後に、血圧計をより長く正確に使用するために、長持ちさせるためのポイントを簡単にご紹介します。
適切な場所で保管する
血圧計の寿命を延ばすには、適切な場所での保管が重要です。高温多湿や直射日光の当たる場所は避け、涼しく乾燥した場所に保管しましょう。特に浴室や調理場など湿気の多い場所での保管はセンサーの劣化を早める原因となります。
また、ほこりの多い場所や振動のある場所も避けるべきです。使用しないときは、付属の収納ケースに入れるか、清潔な場所に保管することをお勧めします。カフやチューブは折り曲げたままにせず、自然な状態で保管すると長持ちします。
正しい方法で測定する
血圧計を使用する際は、取扱説明書に従った正しい方法で測定することが大切です。過度な加圧や何度も繰り返しての測定は、機器への負担となります。また、測定中に動いたりカフをずらしたりすると、エラーが発生しやすくなり、再測定の回数が増えることで機器の寿命が縮まります。
使用後は電源をきちんと切り、カフやチューブを丁寧に扱いましょう。特に上腕式血圧計のカフは、力任せに巻いたり引っ張ったりすると劣化が早まります。電池式の場合は、長期間使用しないときは電池を取り外しておくと、電池の液漏れによる故障を防げます。
定期的にメンテナンスをする
定期的な点検とお手入れも血圧計を長持ちさせるコツです。カフの表面は汚れたら中性洗剤を薄めた水で軽く拭き、しっかり乾かしましょう。また、カフ内部のゴム袋やチューブには水分が入らないよう注意が必要です。
本体は柔らかい乾いた布で軽く拭くだけで十分です。アルコールや漂白剤などの強い薬剤は、変色や劣化の原因となるため使用を避けましょう。また、年に1回程度は医療機関の血圧計と比較して、測定値に大きな差がないか確認することをお勧めします。
これらの管理方法を実践することで、血圧計の寿命を延ばし、より長く正確な測定を続けることができるでしょう。
6.まとめ
血圧計は健康管理に欠かせない機器ですが、約5年、または3万回の測定で寿命を迎えます。部位別ではカフやゴムチューブは3〜4年、電池は200〜300回の使用で交換が必要です。古くなると数値が高めに出る傾向があり、耐用年数の経過、測定値のばらつき、エラー表示の頻発などが買い替えのサインです。
正確な血圧測定のためには、適切な時期での買い替えが大切です。健康管理の質を保つためにも、血圧計の状態にも注意を払うようにしましょう。
当社では救急車を使うほどではないが、自力では病院へ行くことが難しいという方の病院搬送(介護タクシー)を行っています。医療機関を受診したいけど足がない、という場合はぜひお気軽にお問合せください。
この記事の監修者
東京メディ・ケア移送サービス代表 長井 靖
群馬県前橋市出身、臨床検査技師。
医療機器メーカーにて30年人工呼吸器の販売・保守を担当後、呼吸器搬送など医療搬送分野に特化した東京メディ・ケア移送サービスを設立。
日常のケガや病気、介護での通院のほか、輸液ポンプ、シリンジポンプなどの医療機器を導入した高度医療搬送も展開。搬送用高度医療機器の販売・レンタル、研修・セミナーも行う。
監修者・事業者について